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夜天の使い魔 閑話その1

閑話その1 27話とちょっとくらい
 テーブルの上に積みあがる、本、本、本――。
 その数は如何ほどか。ざっと見て軽く二桁を超え、それは明らかに個人が読む分量としては過分であると理解出来た。
「あんたこれどうしたのよ」
 問いかけるキュルケの声色は、呆れ半分興味半分と言ったところか。無作為に一番上の本を手に取りぱらぱらと頁を捲った彼女だったが、すぐさま表情が変わる。
「これ魔法理論書じゃない。これも……そうで、こっちもそう。うわ、嫌なもの見ちゃった」
 折角の長期休暇だというのにこんなものは見たくなかった、とその表情が如実に物語っている。キュルケ・ツェルプストー、余暇には日常を忘れて楽しむのが肝要と心得る彼女にとっては完全に目の毒であった。
「わたしだって好き好んで読んでる訳じゃないのよ」
 答えるルイズの表情もまたうんざりとしており、出来る事なら止めたいというのが表情からありありと読み取れた。
「でもさ、これ課題だからサボる訳にもいかないし。やらなかったら確実に留年ものよ」
 ルイズの溜息を聞きながら、はて、とキュルケは首を傾げた。
「なんであんただけこんなに課題あるの?」
 休暇直前、幾人かの教師に課題を申し付けられはしたが、こんな膨大な量の書物を読み解く必要性も無ければそんな分量も無い。精々一つ二つの事柄について調べ物をしてレポートを提出すれば事足りる、そんな簡単なものだったはずなのだが。
「……出席日数が足りないのよ」
「なんですと?」
 思わず聞き返してしまったが、それもそうか、とキュルケはすぐさま思いなおす。
 フーケ討伐の後負傷により約一週間。アルビオンへの旅路の折は数日に加えてその後無断欠席。さらにタルブ会戦時の負傷で休んだ分を含めれば、その日数は――。
「なるほど、授業の三分の一も休めばこうもなるか」
「こうもなるのよ」
 春の新学期開始から夏期休暇までの間は約三ヶ月、そしてルイズが休んだ日数は一月強。数字だけ見れば、どこからどう見てもとんでもないサボり魔に違いない。
「事情が事情だけに、即落第とはいかなかったんだけどね。その代わりにこれって訳。自業自得とは言えやってらんないわよねー」
 こんなにあっついから尚更ねえ。座学がお得意なルイズ・フランソワーズとは言え、流石にこの分量は堪えるようだった。

 ルイズが自身で語るように、ここまで欠席を重ねるようでは、本来なら即留年となってもおかしくない。しかしそうならなかったのは彼女の負傷が名誉あるものであったのが一つ――学園から怪盗が盗み出した品を取り返す、また会戦の折領民を身を挺して救助した――、そして王室から直々に口添えがあった事が一つ――アルビオンへの遠征後のルイズの処遇については、自らが原因であり彼女に責任は無いとする旨がアンリエッタ王女よりオスマンへと届けられていた――、理由としてあった。そして学院としてもシュバリエを賜り、最近目覚しく実力をつけてきた優秀な生徒の経歴に泥を塗るのは好ましくないという判断をしていたし、政治的な理由としては彼女がトリステインでも有数の権勢を誇る公爵家の娘であるというのもまた確実にあっただろう。とにかく諸々の理由が重なり、落第は相応しくないという結論が下されたのだった。
 しかしだからと言って何もしないという訳にはいかない。どんな理由があるにせよ欠席は欠席、その分授業を受けていないというのは変えられない事実なのだ。彼女がその埋め合わせをきちんとできているか?というのは建前上であろうと計らずにはいられない。
 結果、ルイズ・フランソワーズに課されたのは膨大な量の課題であった。それも、出す方ですら思わず眩暈が起きそうになる程の。教師たちも「こんな量の課題を学生時代に出されたら、絶対に鬱になる」と内心思っていたに違いない。彼らとしても想定外だったのだ、この量は。各々が手心加える事無く、欠席状況から鑑みて数量を算定し課題を出した結果こうなってしまったのだ。

「まったく、これって休暇中に全部終わるの?」
「分量的には十分に可能よ。大して難しく無い内容のものばかりだから。地道にやってればなんとでもなるわ」
「ふうん」
 そうは言うものの、大変な事には変わりないだろう。
「少し位なら、手伝ってあげても良いわよ?」
 こんな言葉がぽろっとキュルケの口から出てきてしまったのは、無理からぬ事だったろう。見かけに反して情に篤い彼女なのだ、共に死線を潜り抜けた、単なる友人と呼ぶには足りない相手となった目の前の少女を助けたいと思うのは当然の成り行きだった。
「んー、遠慮しとく」
 ルイズの返答は素っ気無い。が、少し申し訳なさそうな色が含まれていたのは隠しきれなかった彼女の本当の感情か。
「もう、意地っ張りねえ相変わらず。出した方だってそこまで生真面目にやれとは思ってないと思うわよ?」
「だって、これはわたしに出されたものなんだから、わたしがやらなきゃ駄目でしょ」
 それに、と少女は小さな声で付け加える。
「友達にこんな事押し付けるの……申し訳無いじゃない」
 その言葉に、キュルケは笑う。この換え難い友人の頭をわしゃわしゃと撫で回しながら、笑った。
「あはは、あんたって本当に可愛いわね!」
 こういう娘だから、放っておけないのだ、ルイズ・フランソワーズは。
「でもね、あんまりお姉さんに生意気な口聞いちゃいけないわ。罰として食堂への供を命ずる。さあ行くわよー」
「ちょ、ちょっと何すんのよ」
 キュルケは半ば引き摺るようにルイズを机から引き剥がす。きっと食堂にいけばシエスタが良く冷えた水を出してくれるだろう。一杯くらい、それを味わう権利はあるはずだ。こんな暑さの中、生真面目過ぎる頑張りやさんには、特に。

 人の居ない寮塔に、姦しく響く声二つ。それはいつもと変わらぬ、夏の日の一幕だった。

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20 : 36 : 54 | 夜天の使い魔 閑話 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
やっぱりキュルケが可愛い
と思うのですよ?
特にこの作品は。

そしてがんばれルイズ。バベルの塔を攻略するのだ♪
by: ぎるばと? * 2008/06/30 01:36 * URL [ 編集] | page top↑

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