スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-- : -- : -- | スポンサー広告 | page top↑

夜天の使い魔08話

 ――アンリエッタ姫殿下、来訪。
 その報せがオールド・オスマンの元に届いたのは初夏の一大行事、使い魔品評会が後一週間に迫った夜の日事だった。
「やれやれ、なんとも急な事じゃの」
「姫殿下は現在ゲルマニアをご訪問なされてると記憶しています。その帰りに当学院に足を伸ばされるご予定のようですな」
 嘆息するオスマンの言を次ぐコルベール。秘書であるミス・ロングビルが行方不明なって以来、何故かオスマンは彼を雑用でこき使うようになった。
 理由を聞いたら「ほらお前さん、ミス・ロングビルと仲良う話してる事多かったじゃろ?」と筋の通ってない答えが返ってきてだからどうした、と思ったのだが次に続いた言葉が「わしの秘書に手を出すなんてちーっと許せんなーと言うか一緒にランチ食べに行ったりとかしたんじゃろ? わしが一人侘しくこの学長室で飯食ってる間に若い二人で楽しんでたんじゃろ? なんかオスマン悔しいかなーって」。年甲斐も無く嫉妬かこのエロジジイ。
 
「書簡によれば品評会の見学が目的らしい。何故今年になっていきなりこのような行事に興味を持たれたのか、さっぱりわからんなあ」
 おどけた口調とは裏腹に、老人の目は笑っていない。猛禽のような鋭さを湛え、外に浮かぶ月を見やる。
 
 現在隣国アルビオンでは革命騒ぎが起きている。今は一国の内乱で事が住済んでいるが、伝え聞く話によると彼らの目的はこのハルケギニアを統一する事だそうだ。なんとも大きく出たものだ。
 しかしそれは笑い事では無い。今のアルビオン王家が倒れれば、その矛先はすぐさまこのトリステインに向かうだろう。メイジを数多く抱えてはいるが小国であるトリステインでは、ハルケギニアに名高い最強の空軍を抱えるアルビオンには到底太刀打ち出来まい。だからこそのゲルマニアとの同盟。その為の王女訪問。
 そして「無能王」が治めるガリアはまるで動きが無いのが逆に不穏だ。何を企んでいるのか知れたものではない。
 今、世界は大きく動こうとしている。そのような時に一々一国の姫が来訪してくるのなら、ただの気紛れという事はあるまい。
「なんであれ、丁重にお出迎えせねばならんの」
 あまり年寄りに気苦労を背負わせるな、と再び溜息が漏れるオスマンだった。
 
 使い魔品評会。
 それはトリステイン魔法学院の二年生にとって最も重要な行事である。その名の通り春先に行われた召喚の儀式によって呼び出された己の使い魔を、学院の教師生徒の皆々様にお披露目して見て貰おうという催しだ。
 しかしこれは単なる「どんな使い魔を召喚したか」を眺めるだけの鑑賞会では無い。格言に曰く「メイジの実力を知りたいなら使い魔を見よ」と言われる通り、使い魔はメイジの鏡である。どのような使い魔を喚んだかというのはそのメイジの実力そのものでもある。強力な幻獣の類を喚んだとなればそれだけ実力が優れている事の証左となるだろう。要するに、己の実力を知らしめる良い機会と言う訳だ。
 ではそれらに少々見劣りするような使い魔――犬猫家畜の類等――を喚んでしまった者達はそれだけで挽回する機会が無いのか、と言えばそうでは無い。さらに格言に曰く、「使い魔を使いこなしてこそ一人前のメイジである」。ただ強力な使い魔におんぶ抱っこではメイジの名が廃る。その使い魔をどのように使いこなすか、使い魔ときちんと主従関係を結べているかというのも重要な点となってくる。
 それら二つの点を総合して品評し、見事最優秀とされた生徒には学院よりその証として煌びやかな杖が送られる。宝石で装飾された美しいもので、誰もが手に入れたいと願う一品だ。その為品評会が近付くと必死に使い魔に芸を仕込む二年生の姿が見られるのが魔法学院の風物詩となっていた。
 

 使い魔品評会に向けて気焔を上げているのはルイズ・フランソワーズも例外では無い。狙うは勿論杖の獲得。やるからには狙うは常に最上級が彼女の生き方である。
「狙うわよ一等賞!」
「……あんた正気?」
 中庭で叫んでたらキュルケに呆れられた。
「あのねヴァリエール、確かに喚んだ使い魔の質だけが勝負って訳じゃないけどね、幾らなんでも本で勝利を狙うのは無謀じゃないかしら。だって本は喋る事も動く事も無いのよ? それでどうするつもり?」
 その問いに、よくぞ聞いてくれました、と言いたげに胸を反らせながらルイズは応えた。
「見なさいよこの美しい表紙! さんさんと輝く太陽を十字が照り返してまるで宝石のように光っているわ。そしてなめらかな紙質は絹よりも素晴らしい触り心地。まさにハルケギニア一美しい使い魔と言っても過言では無いわ。品評会では皆この本の魅力の前に平伏す事でしょう」
 ――ああ、何時の間にかヴァリエールが使い魔馬鹿になってる。
 キュルケの頭を軽い頭痛が襲う。
 
 使い魔馬鹿とは、2年生に進級した生徒なら一度は誰でも陥る厄介な代物である。召喚した使い魔と交流を深める内にどんどん親愛の情が深まっていって、遂には「私の使い魔が世界で一番!」という痛い思考に陥ってしまう事を指す。まあ初めて使い魔を持ったメイジが罹患するはしかのようなものだと思ってもらえれば間違いないだろう。
 
 キュルケにだって覚えはある。想像以上に立派な体躯をした火蜥蜴を呼び出せた喜び、つぶらな瞳にちろちろと見え隠れする炎の舌、きゅるきゅると言う可愛らしい鳴き声。喚び出した当初はそりゃあもう可愛くて可愛くて仕方が無かった。しかし猫可愛がりとまでは行かなかった……はずだと思う。少なくとも今のヴァリエール程には。
 
 現在のルイズの状態は完全にご愁傷様、と言うしかなかった。これは暫く放っておくしか無い。この病の厄介な所は癒す術が時間しか存在しない事である。これは重症だから大分長引きそうね、と被りを振ったら「嗚呼可愛いよ僕のヴェルダンデ! 溢れんばかりのその美貌! 君は最高だ! もはや存在そのものが芸術だよヴェルダンデ!」と喚き散らす優男の姿が目に入り、さらに頭痛が増した。貴様もかギーシュ・ド・グラモン。
 
「そしてわたし達には切り札が存在するのよ。このパフォーマンスがあれば最早勝利は確定したも同然ね」
 さらに信じられない言葉を放つルイズの自信満々な様子に、キュルケ頭痛は最高潮に達した。
「……一体本に何をさせる気なのか知らないけど、一応見てあげるからやってごらんなさいな」
 杖を振るい人の大きさ程度の土ゴーレムを二体作るルイズ。その内一体は自らの横に、もう一体を10メイル程遠くに離して立たせる。二体が所定の位置についた事を確認すると、脇で待機するゴーレムに己の使い魔を渡した。ゴーレムは主より本を受け取ると、大きく振りかぶり、そして-。
 
 振るう腕が唸りを上げる程全力で、投擲した。
 
 風切り音を立てながら激しく回転し、飛んでゆく本。高速で身を回すそれはさながら黒と金色を纏う円盤のようだった。
 10メイルの距離をあっと言う間に詰めると、最後には向こうに居たゴーレムの手で受け止められ勢いを失った。
「どう? 私の使い魔の体を張った壮絶なパフォーマンスは。驚きの余り声も出ないかしら?」
「確かに驚いているけど、多分あんたの想像してるのとはまったく違った驚きね」
「あら? 凄いと思わなかった?」
「いや、ある意味凄いとは思うけど……これって使い魔自身の能力と何か関係あるのかしら」
 どう見てもただ本をブン投げたようにしか見えない。

 そのキュルケの言に心外な、とでも言いたげにルイズは頬を膨らませた。
「普通の本をあんな風に投げたら途中でばらばらになっちゃうわよ。私の本はそこいらの本とは違ってお行儀が良いから空中でばさばさ開いたりしないの、だからちゃんと最後まできちんと飛んでいられるのよ」
 うん、確かにそれは凄い、とキュルケは少し納得した。でもなんか論点ずらされているような、というかそもそも本の行儀って何よ?
 とりあえずぱちぱちと投げやりに手を叩いておいた。

「……あんた全然感心して無いでしょ」
「いいえそんな事ありませんわおほほほほ。結局ただ本を投げているだけじゃないなんて欠片程も思っていませんことよ?」
「はいはいお優しいお言葉感謝の極みでございますわ」
 ルイズはそんな態度のキュルケに甚く不満があった。見事な主従のコンビネーションから繰り出される渾身の一芸だと言うのに、まったく関心した素振りが見られないではないか。実は自信満々で披露したルイズであったので、その自尊心へのダメージは意外に大きかった。
 
 ただ単に本を放り投げるだけの詰まらないものに見えるこの芸は、その実彼女達の努力の末に到達した、見た目よりも奥の深いものであったからだ。
 最初ルイズは「本が空を飛ぶ」というハルケギニア中探しても絶対に無いこの現象を見せようと考えたのだが、ただ空を飛ぶだけでは今一インパクトにかけるような気がした。
 とりあえず手で押して素早く飛ばそうとしてみた。ふよふよ~と漂う本は一定距離を飛ぶと再びルイズの元へ戻ってくる。
「……派手さに欠けるわね」
 それならゴーレムに投げさせてみましょ、と試しに全力投擲させてみた。
 空を凄まじい速度で飛んでいった本はやがて視界から完全に消え、地平の彼方へと吸い込まれていった。
 -やばい、やりすぎた。
 やらずに後悔するよりやって後悔するがモットーの彼女であったがこの時は流石に反省した。自分の使い魔はもっと労わらないと。
 数分後、何事も無く本は自力で戻ってきた。その姿には傷一つ無い。申し訳なかったのでぎゅーっと抱きしめて謝意を示してみたら何処か嬉しそうな感じを受けた。うん、本当に良い子だ。
 飛んで行き過ぎるならば受け止めれば良い。ルイズはそれをゴーレムをもう一体配置する事によって解決した。
 さらに主の創意工夫に報いようとしたのか、本が自発的に回転を始めた。投擲中の回転は放り投げて起きたものではなく、実は本自身が回転していたのだった。まさに主従一丸となったコンビネーション。
 こうして、ルイズの望む「派手な飛行」は完成された。その見事な出来栄えにルイズもご満悦であった。まさに非の打ち所の無い完璧な芸。
 しかし彼女は必死になる余り重要な事を失念していた。それは先程キュルケが言った通り、どう見てもただ単にゴーレムで本を放り投げているようにしか見えないと言う事だ。普通にふよふよ本が浮いている方がよっぽど凄く見える。しかし既に己の使い魔が浮く事が日常となってしまっていたルイズはそれに気付かなかった。なんとも間抜けな話である。

(うう~、驚きなさいよね、ツェルプストーの奴! こうなったら本当の切り札を見せるしかないようね)
 ルイズは奥の手を切る事にした。本来なら品評会でお披露目して場の話題を掻っ攫ってやろうと、当日までなるべく人には見せないようにするつもりだったが構わない。このままキュルケに馬鹿にされるのは非常に悔しい。
「見てなさい、次はほんっとうのほんっとうに本気なんだから!」
 再びゴーレムに投擲体制を取らせ-さらに勢い良く投げる。
「ふふふ……今度のは凄いわよ。なにせあっちで受け止めなくても一人でに本が戻ってくるんだから。空中で美しく描かれる曲線に皆が釘付け間違いなしね」
 この技は投げた本がくるりと輪を描いて手元に戻ってくるという彼女達最大最高の大技(自称)である。要するに、本で行うブーメランだ。
 しかし気合が入りすぎた為か、想定よりも勢い良く投げられた本は大きく大きく弧を描き、ルイズも考えなかったような場所に飛んでいってしまった。
「……戻ってくる気配が無いわよ、ルイズ」
 ……またやっちゃった? キュルケの呆れた声にルイズの頬をつう、と一筋汗が流れ去っていった。
 

 皆が使い魔に芸を仕込む事に必死になっている中、まったくそれに興味を示さない者が居た。
 雪風の二つ名を持ち、幼いながらも強力な魔法の担い手である小柄なメイジ。その名はタバサと言った。あからさまに偽名と判るその名だが、彼女の真実の名を知るものは誰も居ない。最も懇意としているキュルケですら知らぬ事だった。また物静かで人を寄せ付けぬ雰囲気を発しており、常に本ばかり読んで居る為人付き合いも少なく、故に彼女は一人で過ごしている事が多かった。
 そんな彼女であったから、当然の如く今現在も一人喧騒を離れ、学園の隅の方で本を読んでいた。いや、正確には一人では無い。彼女の傍らにその使い魔が寄り添っていたからだ。体躯は喚び出された使い魔の中でも一際大きく、堂々としていた。それもそのはず、彼女の使い魔は風竜なのだから。まだ成体では無いとは言え、全長は7メイルにも及び見る物を圧倒する迫力があった。
 その口が開かれる。恐ろしげな咆哮が辺りに木霊すると思いきや-。
「きゅいきゅい! お姉さま、シルフィも何かして遊びたい」
 流れ出たのは少女のような可愛らしい声。そしてなんと、人語を話しているではないか。人が飼う生き物を使い魔として契約した場合に人語を解するようになる例はあるが、龍がそうであるという話はまったく聞いた事は無い。
 詰まる所、シルフィードはただの竜では無かった。人よりも高い知能を誇り強力な先住魔法をも用い、大空を自由に飛びまわりその吐息で敵を焼き尽くす強大な力を秘めた幻獣。既に絶滅したと言われる伝説の古代竜、韻竜であった。
「駄目」
 シルフィードの問いかけに素気無く答えるタバサ。シルフィードは不満そうに「うー」と一声唸るとさらに言葉を続けた。
「みんなあんなに楽しそうにしてるのにわたしだけじっとしてるなんてとても退屈だわ! ねえお姉さま、一緒にお空に散歩しに行きましょう! きっととっても気持ちいいのね、きゅい!」
 シルフィードはタバサの事を「お姉さま」と言って慕っていた。奇妙な事に、タバサよりも10倍以上の年月を重ね生きているのに彼女の事を姉のように思っているのだった。実際、彼女の精神は子供のように奔放で自由でまっさらだったから、色々な辛酸を舐めて大人びていたタバサを年長者として敬うのも無理からぬ事であったのかもしれない。
 彼女はなんとか大好きな姉の気を引こうと必死に話しかける。しかしタバサは何処吹く風とただ本の頁を捲り行くのみだった。
 流石にちょっと悲しくなってくるシルフィード。大好きなお姉さまと居られるだけでも嬉しいけど、本当は一緒に楽しい事がしたい、それが本音だった。ただ傍に居るだけで満足出来る程、彼女は成熟していなかった。
 しかし、自らの姉が頑固であるのは十分に承知していた。駄目というなら駄目、梃子でも意見を変えたりはしない。仕方なしにそのままうなだれるしかなかった。
 しかしその時タバサからぽつりと一言。
「後でなら良い」
 ぱあっとシルフィードの顔が輝く。
「やったあ! お姉さま、大好きなのね!」
 風韻竜ははしゃぎまくった。その姿はとても伝説の竜と恐れられているとは思えない程無邪気で微笑ましいものだった。
 その時、やったやったと喝采する彼女の頭部に突っ込んでくる「何か」。加速により威力を備えたそれは十分に凶器と言えるものだった。それは竜の巨体をもつんのめらせる程の勢いで彼女の後頭部にぶち当たった。
「ううう……痛いの」
 幼くとも竜、この程度でどうこうなるほどやわでは無い。しかし痛いものは痛かった。涙目できゅいきゅいと声を上げる。
 一体何が、と辺りを見た彼女の目に入ったのは一冊の本の姿であった。
「お姉さま! この本が飛んできたのね! きっとこれはわたしの可愛さにねたんだ誰かの陰謀よ! そうに違いないのね!」
 騒ぐ風韻竜に、元凶となった本をじっと観察するその主。タバサはそれに見覚えがあった。確かこれは-。
 かさ、と草を踏む音がする。思わずそちらを見るタバサとシルフィードはその音の主と思いっきり視線を交し合う事となった。
「竜が、しゃべってる?」
 果たして、そこに居たのはルイズ・フランソワーズであった。

 ルイズは遥か彼方へ吹っ飛んでいった使い魔を探しに行く事にした。きっと放っておいても勝手に戻ってくるに違いないのだろうが、それはなんとも気まずい。自分の不手際なのだから、きちんと責任を取らなくてはならない。それも主人としての義務だろうと思ったからだ。
 随分と遠くまでとばしちゃったな、と一時の感情に流されすぎた事に対し再び反省の念を持ちながら本が飛んだであろう場所まで探しに来た所、タバサ達と鉢合わせしたと言う訳だ。
 
 シルフィードはあからさまにしまった、という表情になった。偶然とは言え、人語を話す所を聞かれてしまったのだ。人前では話さないように、話せる事を知られないようにとタバサにきつく申し付けられているというのに。
 タバサの方もこれには困った。一先ずしらを切り通すしか無いだろう。稚拙ではあるが「気のせい」と強固に主張すればなんとかなるかもしれない。まさか韻竜がこのような場所に居るなんて常識では考えられないのだから。
 
「きゅいきゅい! どうしようお姉さま、わたしの事ばれちゃった!」
 -おばか。
 タバサの目論見は一瞬で潰えた。そしてさらに悪い事に-。
「わっ、シルフィードが喋ってるわ!」
 ルイズの後を追ってきたキュルケに聞かれてしまった。これではもう誤魔化しようも無い。
 一方のルイズも常識外れの光景に驚き一瞬身を固まらせるが、すぐに聡明な頭脳が回り始め己に蓄えられた知識を端から調べていって、目の前で起こった出来事の答えに行き当たった。
「もしかして、シルフィードって韻竜なの?」
 勉強熱心なルイズはその存在を知っていた。伝説と謳われ既に滅び去ったと言われている伝説の種族。文字通り、生きた伝説を眼前としていた。
 タバサは観念したようにこくり、と肯き肯定した。そして一言告げる。
「お願い、秘密にして」
 彼女の静かな瞳が、一段と真剣身を帯びているように感じられた。
「勿論よ、あなたのお願いを聞かない訳が無いじゃない!」
 キュルケは即答した。友達にお願いと言われて逡巡するような性格はしていなかった。入学以来付き合いのある友達の願いなのだから、尚更だ。
「私だって構わないわ……タバサには、色々助けて貰った恩もあるし」
 ルイズだって恩人の頼みを断る程薄情では無い。
 それに聡明な彼女はすぐに何故秘密にしたがるかの理由を察した。絶滅したと言われる風韻竜が姿を現したとなれば、アカデミーあたりはどんな手を尽しても手に入れたがるに違いない。己の使い魔を護る為の措置としては実に妥当な判断だった。
「それにしても……伝説を引き当てちゃうなんてねえ、凄いじゃないタバサ!」
 ぎゅっとタバサを抱きしめて頭を撫で回すキュルケ。
 タバサは無言で杖を掲げると、ある一点を指し示した。
「あっちの方が凄い」
 その先にあったのは、ルイズが抱える彼女の奇妙な使い魔の姿だった。
「あれは凄いと言うか……変?」
「人の使い魔を変とか言うなーっ!」
 ルイズの甲高い叫び声が、辺り一面に木霊した。
 
 逃げるキュルケを、ルイズが追いかける。周りが幾ら騒がしくなっても、タバサは我関せずと本を読み続けている。何時もと変わらぬ、同じ態度のように見えるけど。
「きゅい! お姉さま、ちょっと嬉しそうなのね!」
 何時もと変わらぬ氷の表情がほんの僅かだけ溶けている、シルフィードにはそんな風に感じられた。それが、なんだか嬉しくて――シルフィードも釣られて笑い出すのだった。


前の頁の記述を読む  目次に戻る 次の頁の記述を読む
スポンサーサイト
14 : 25 : 09 | 夜天の使い魔 第一部 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
<<夜天の使い魔09話 | ホーム | 夜天の使い魔07話>>
コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://rein4t.blog123.fc2.com/tb.php/42-d653aac0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |

プロフィール

夜天の人◆Rein4tm63s

Author:夜天の人◆Rein4tm63s

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

カレンダー

06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

がらくたかうんたー

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。