目を開けると、そこは白に包まれた世界だった。
しんしんと降り積もる雪。それは辺りを一面に多いつくし、地面を純白に彩っていた。灰色に白んだ空からは止め処なく雪が降ってくる。そんな気候であるはずなのに、ルイズはまったく寒さを感じていなかった。むしろ、暖かく心地良いとすら感じられた。
目の前に開けた空間から臨めるのは海で、見える光景から察するにここは海岸線近くにある何処か小高い場所らしい。丘の下には見た事も無いような建物が立ち並んでいる。
ルイズは、そんな場所にある小さな広場に一人、立っていた。
ここは、いったい何処なのだろう――。
タルブ領を治めるアストン伯は行動の早い男であった。アルビオン艦隊の動きを察知するや否や即座に伝令を飛ばし、自らも出陣の用意を整える。彼の優秀さがあったからこそ、トリステイン王宮の面々は早々にアルビオン侵攻を知る事が出来たのだ。
「見ろ、艦長。一撃だ! 一撃で敵は総崩れだぞ!」
自らの横で驚喜するサー・ジョンストン――トリステイン侵攻軍総指揮官――を、冷え切った感情でボーウッドは見つめていた。
総崩れ。なんと控えめな表現だろう。レキシントン号主砲の直撃を受けた敵の旗艦は文字通り欠片も残さず吹き飛んでいた。哀れな骸を晒す権利すら失い、この世から消滅したのだ。そしてその余波で巻き起こった爆発に巻き込まれ、艦隊を形成していた残りの戦艦も2隻を残し全滅。その残った2隻も戦闘可能とは思えぬ程損傷していた。それは最早戦闘とは言えぬ、虐殺としか言い様の無い一方的な光景だった。
「シエスタ、クローゼットに制服が入ってるから取って頂戴」
朝日の中背筋を伸ばして立っている姿は、まるで今までのルイズとは別人のようだ、とシエスタは感じた。シエスタがこれまで見てきたのは弱弱しく力ない雰囲気を漂わせただベッドに座っていた小さな少女の姿だった。それが今はどうだろう、やや痩せこけた面持ちこそあるものの、全身を生気が被い小柄でありながら力強さを感じさせるこの姿、とても同一人物とは思えない。でも、これがルイズの本当の姿なのだと彼女は思う。今のこの雰囲気が、実にこの少女には相応しいと、何故か自然に感じられたのだ。
先に終結したアルビオン内戦を、勝利者であるレコン・キスタ――アルビオン帝国では「革命戦争」と称していた。悪しきアルビオン王家を制し正しき姿に立ち戻らせた、そのような意味合いがその名には籠められているのだろう。アルビオン新政府の者達は好んでこの名称を用い、先の戦いを語っていた。